ラの技芸学校へ。
五男のポオル ――マチスとか申す画描きのところに弟子入りさせて下さい。
六女のマリイ ――この子に学問はいりません。
七男のルイ ――安南のP・M・D木綿会社へ見習いにやって下さい。
八女のソフィ ――実のところ、わたくしも、この子の処置についてはまだ考えてはおりません。しかし、大実業家、又は相当の家柄から養女に望まれましたらば、そこへお遣《つかわ》し下さる様。
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[#地から1字上げ]信実なるA・ジェルメエヌ。
 八、尻尾に火が付けば亀でさえ跳ねる。事《こと》身命《しんめい》に関する限り、迂濶《うかつ》なるコン吉も迂濶のままではいられない。朝は早くから肉や野菜の買い出しにかかり、沖から漁舟が帰るを待ちかねて魚を撰みにゆく、それが終れば、タヌと二人で真白になってパン粉を練り、伸して型で抜き、杏《あんず》の罐を開き、鶏《とり》の毛をむしり、麺麭《パン》屋へ駈けつけて、鶏の死骸が無事にパン焼竈《やきかまど》に納ったのを見届けて駈けもどり、玉菜《ぎょくさい》をゆで、菠薐草《ほうれんそう》をすりつぶし、馬鈴薯《じゃがいも》を揚げ、肉に衣《ころも》をつけ、
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