それも相当渋いもので、眼にたつ意地悪をするのではない。思いもかけぬようなところでピリッと辛いのである。こういう複雑なやりかたもあるものかと、そのつど、剛子はあっけにとられる。
なにしろ、打算にたけた叔母のことだから、どうせ、なにか相当の理由がなくてはならぬはずだ。なかなか、二人の娘のひきたて役ぐらいのところではなかろうとおもわれる。
考えてもわかりそうもないことだし、生れつき屈託のないたちだから、あまり深いせんさくはしないことにしている。なにか自分の信念に反するようなことでもおしつけられたら、その時はそれに相当した態度をとればいい。つつましくは暮らしてきたが、そういう場合にとるべき態度だけはちゃんと教えられている。
剛子は、もう一時間もこうしてひとりでサン・ルームの竜舌蘭《りゅうぜつらん》のそばにかけている。
ここへはだれもやってこないし、窓からは陽がさしこむし、居心地の悪いことはないのだが、どうにも退屈でやりきれなくなってきた。なにもしないでいるというのは、なんという厄介《やっかい》なことだろう。
もっとも、これは今日に始まったことではない。ここへきてもう二日目にすっかり
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