とがあるか」「曽てなかった」「何故しないか」「理由は分らないが、古版本をそのまま用いたのである」「それじゃいよいよそれがいいということを知ったらお前はやる気か、やらぬ気か」「それはやったらどうだろうかという考えを決めようと思って見ているのだ」「それは直ぐにやらなければならぬ、これはいったい何時頃の物か」「西暦で七百五十年の奈良時代の物だ」「八世紀の物が、もし西洋にあったら、しかもそれがバイブルに関係した物であったら耶蘇教者は一寸刻みにして研究するだろう。それにこんなにたくさんあるじゃないか。天平の写経が石山寺に[#「石山寺に」は底本では「石寺山に」]十箱ある。こんなにたくさんある物を比較しないということは日本学者の恥だ。またこれを比較したが、それを出版しないということは不都合である」というような話をした。その日は帰ってまた翌日来る。同じ話をした。実は私が一切経を出版しますことを初めて決心しましたのはその時であります。それまでは費用のことを考え、出版後の売行きをも考え、今までも既に出しているのにまた出すというのは不必要だというふうにいろいろ考えておったが、写本が正しい、良いということが分
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