の答えをする。だんだん話して行くと、山の中におって海を知らないのであるから日本の国がどこにあるということを説明するのに甚だ困った。まず第一海というものが分らないのであるから、この山を越すと向うにインドのような大きな国があり、その先に恒河のような大きな河を幾つも合せたようなのがあって、その先にあるのがジャッパンプールである、そのジャッパンプールという所はインドの千分の一ぐらいしかないけれどもいま世界に雄飛している国だといったふうに説明するのでありますがなかなか要領を得ない、けれども静かに考えて、そうして昔ながらの哲学の理想を説き出すというようなことになるというと、なかなか雄弁に説き出す。これは唯一例でありますけれども、インドにはたくさん乞食がおりますが、それは決してその形に見えるような乞食のみの人間ではないということは明らかにいい得るのであります。
 で、われわれインドの乞食に対する時にはよほど寛大の態度で臨まぬというと時に失敗することがあるのであります。そういうふうな国柄であります。でどんな生活をしておっても自分の精神は失わない、どんなに蹂躙されても自分の理想を失うということはしない、このことだけはインド人はよく心得ているのであります。こういうふうの人種というものはよほど経済という事を頭に置かないような人間でなくては全く出来ないのでありますから、世界にこういう国は他にないといってよいのであろうと思います。それだからインドのことを考える時に、能く此国の状態を間違って説く人が多いのでありますが、そういう方面をお話する目的ではないのでありますから、まず理想が全く違っているということだけをお考え下さいまして、そうしてこの理想の流れがどの位の波紋を東洋に描いたのであるか、また今世界に向って描かんとしつつあるのであるかということを、だいたいはご承知のことでありましょうが、一通り辿って見たいと思うのであります。

         二

 インドの文明は古いように申しますけれどもそう古いものではない、文明としては極めて新しいものであります。新しいと申しましても紀元後二千年、その前がせいぜい二千年……もう少し刻んでいったら二千年に足りませんが、三千五百年かその前後の範囲の文明であります。無論その前にも文明はあったに違いないが、今形の上に残っている文明としてはそのくらいの範囲でありま
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