名の知れぬ花も咲いてた月見草も
雨の真昼に咲いてたコタン

賑かさに飢えて居た様な此の町は
旅芸人の三味に浮き立つ

酒故か無智な為かは知らねども
見せ物として出されるアイヌ

白老《しらおい》のアイヌはまたも見せ物に
博覧会へ行った 咄! 咄※[#感嘆符二つ、1−8−75]

白老は土人学校が名物で
アイヌの記事の種の出どころ

芸術の誇りも持たず宗教の
厳粛もないアイヌの見せ物

見せ物に出る様なアイヌ彼等こそ
亡びるものの名によりて死ね

聴けウタリー アイヌの中からアイヌをば
毒する者が出てもよいのか

山中のどんな淋しいコタンにも
酒の空瓶たんと見出した

淪落の姿に今は泣いて居る
アイヌ乞食にからかう子供

子供等にからかわれては泣いて居る
アイヌ乞食に顔をそむける

アイヌから偉人の出ない事よりも
一人の乞食出したが恥だ

アイヌには乞食ないのが特徴だ
それを出す様な世にはなったか

滅亡に瀕するアイヌ民族に
せめては生きよ俺の此の歌

ウタリーは何故滅び行く空想の
夢より覚めて泣いた一宵

単純な民族性を深刻に
マキリもて彫るアイヌの細工

アイヌには熊と角力を取
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