る様な
者もあるだろ数の中には
悪辣で栄えるよりは正直で
亡びるアイヌ勝利者なるか
俺の前でアイヌの悪口言いかねて
どぎまぎしてる態の可笑しさ
うっかりとアイヌ嘲り俺の前
きまり悪気に言い直しする
アイヌと云う新しくよい概念を
内地の人に与えたく思う
誰一人知って呉れぬと思ったに
慰めくれる友の嬉しさ
夜もすがら久しかぶりに語らいて
友の思想の進みしを見る
淋しさを慰め合って湯の中に
浸れる友の赤い顔見る
カムチャッカの話しながら林檎一つを
二つに割りて仲よく食うた
母と子と言い争うて居る友は
病む事久し荒んだ心
それにまた遣瀬なかろう淋しかろう
可哀そうだよ肺を病む友
おとなしい惣次郎君銅鑼声で
「カムチャッカでなあ」と語り続ける
久々に荒い仕事をする俺の
てのひら一ぱい痛いまめ[#「まめ」に傍点]出た
働いて空腹に食う飯の味
ほんとにうまい三平汁吸う
骨折れる仕事も慣れて一升飯
けろりと食べる俺にたまげた
一升飯食える男になったよと
漁場の便り友に知らせる
此の頃の私の元気見てお呉れ
手首つかめば少し肥えたよ
仕事から仕事追い行く北海の
荒くれ男俺
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