れるな黒はよい犬
「ガッチャキの薬如何」と門に立てば
せゝら笑って断られたり
田舎者の好奇心に売って行く
呼吸もやっと慣れた此の頃
よく云えば世渡り上手になって来た
悪くは云えぬ俺の悲しさ
此の次は樺太視察に行くんだよ
そう思っては海を見わたす
世の中にガッチャキ病はあるものを
などガッチャキの薬売れない
空腹を抱えて雪の峠越す
違星北斗を哀れと思う
「今頃は北斗は何処に居るだろう」
噂して居る人もあろうに
灰色の空にかくれた北斗星
北は何れと人は迷わん
行商がやたらにいやな今日の俺
金がない事が気にはなっても
無自覚と祖先罵ったそのことを
済まなかったと今にして思う
仕方なくあきらめるんだと云う心
哀れアイヌを亡ぼした心
「強いもの!」それはアイヌの名であった
昔に恥じよ 覚めよ ウタリー
勇敢を好み悲哀を愛してた
アイヌよアイヌ今何処に居る
アイヌ相手に金儲けする店だけが
大きくなってコタンさびれた
握り飯腰にぶらさげ出る朝の
コタンの空に鳴く鳶の声
岸は埋め川には橋がかかるとも
アイヌの家の朽ちるがいたまし
あゝアイヌはやっぱり恥しい民族だ
酒に
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