いことを思いついたのでした。
和太郎さんは、牛をくびき[#「くびき」に傍点]からはなしました。そして、こぼれたおり[#「おり」に傍点]のところにつれていきました。
「そら、なめろ」
牛は、おり[#「おり」に傍点]の上に首をさげて、しばらくじっとしていました。それは、においをかいで、これはうまいものかまずいものか、と判断しているように見えました。
見ている百姓たちも、いきをころして、牛は酒を飲むか飲まぬか、と考えていました。
牛は舌を出して、ぺろりとひとなめやりました。そしてまたちょっと動かずにいました。口の中でその味をよくしらべているにちがいありません。
見ている百姓たちは、あまりいきをころしていたので、胸が苦しくなったほどでありました。
牛はまた、ぺろりとなめました。そしてあとは、ぺろりぺろりとなめ、おまけに、ふうふうという鼻いきまで加わったので、たいそういそがしくなりました。
「牛というもなァ、酒の好きなけものとみえるなァ」
と村びとのひとりが、ためいきまじりにいいました。
ほかのものたちは、じぶんが牛でないことをたいそうざんねんに思いました。
和太郎さんは、牛
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