和太郎さんと牛
新美南吉
−−−−−−−−−−−−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)もの憂《う》い
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)村の一文|商《あきな》いやが、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)結合がある[#「ある」に傍点]
−−−−−−−−−−−−−
一
牛ひきの和太郎さんは、たいへんよい牛をもっていると、みんながいっていました。だが、それはよぼよぼの年とった牛で、おしりの肉がこけて落ちて、あばら骨も数えられるほどでした。そして、から車をひいてさえ、じきに舌を出して、苦しそうにいきをするのでした。
「こんな牛の、どこがいいものか、和太はばかだ。こんなにならないまえに、売ってしまって、もっと若い、元気のいいのを買えばよかったんだ」
と、次郎左《じろうざ》ェ門《もん》さんはいうのでした。次郎左ェ門さんは若いころ、東京にいて、新聞の配達夫をしたり、外国人の宣教師の家で下男《げなん》をしたりして、さまざま苦労したすえ、りくつがすきで仕事がきらいになって村にもどったという人でありまし
次へ
全32ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング