三男 ぼく知ってら。にいちゃんたち、祭にいくんだよ。ね、そうでしょう。ぼくいま夢《ゆめ》を見たの。去年の祭にきた猿《さる》まわしとね、ぼく、菜種《なたね》畑ん中でいきあったの。去年はね、お猿が一ぴききりだったでしょう。今年はね、そのお猿と赤ん坊の猿と二ひきできてるの。ぼくが菜種の花をちぎってなげてやったら、大きな猿が、とてもじょうずにうけとってね、小さいお猿に半分ちぎってやって、パクパクたべてったよ。
母 そう、それはよかったね。にいちゃんたちはじき帰ってくるからね、よし坊ちゃんはかあさんとお家で待っていましょうね。
三男 いやだい。ぼくもいくんだ。
母 そんなこと、いうもんじゃありません。起きちゃいけませんよ。お医者さんがおっしゃったでしょう、じっとしてなきゃ、病気はなおらないって。
三男 いやだい。ぼく見たいんだ。猿《さる》まわしやお芝居《しばい》が。
母 お病気がなおったら、町へつれてって映画を見せてあげるから、きょうはおとなしくかあさんと待ってましょうね。そのかわり、ねえちゃんにいいものを買ってきてもらいましょう。よし坊ちゃん、なにがほしいの。
長女 絵本
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