、そんなこと一ぺんもしやしないわ、かあさん。
母 そんなことしてはいけませんよ。でも女の子って、そんなに色が白くなりたいのかしら。(笑う)
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(このとき、次男の着つけも終わる)
(花火の音がする)
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長女 あら、びっくらした。
次男 でかいなあ、いまのは、二尺かもしれないよ。
長男 地ひびきがしたよ、表のつばきの花が落ちたよ。
長女 あたし、こわいわ、花火なんて。みぞおちのとこがどきんどきんするわ。
次男 臆病《おくびょう》だよ。すずめみたいだよ。さっき表で見たらね、かあさん、すずめが花火のはじけるたびにとびたって、裏山の方へ逃げてったよ。もう村には、一わもいやしない。
長男 さあいこうよ。かあさん、おこづかいは。
母 さあ、たあちゃん、次郎ちゃん、あやちゃん。みんな二十銭ずつですよ。落とさないように、気をつけてね。花火やなんかつまらないものや、氷のものは、買っちゃいけませんよ。
次男 かあさん、ぼく、靴《くつ》にあながあいてるから、よし坊のをはいてっていい?
母 もう
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