う。
長女 知らないわ、そんなこと。
三男 どっかの黒い海にいくよ。
長女 そうかしら。
三男 だめだなあ、おねえさんなんか。なんにも知らないや。
長女 知ってるわ、あたしだって。
三男 知らないや。
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(沈黙。すぐ近くでひばりが鳴きはじめる)
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三男 くに[#「くに」に傍点]ちゃんとこでもらった雛《ひな》を持っておいでよ。
長女 どうするの? よし坊ちゃんがねてる間に、もう餌《え》をやっといたわよ。
三男 もってこいよ。
長女 もってきてどうするのさ。にいさんたちに見つかると、とりあげられちまうわよ。
三男 にいちゃんたち、祭にいってら、ばか。
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(女の子、裏口から出ていって、すぐボール箱《ばこ》を持ってはいってくる)
[#ここで字下げ終わり]
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三男 箱《はこ》から出して、ぼくの手にのせてくれよ。
長女 だめよ、そんなことしちゃ。まだ弱いんだから、手にとったら死んでしまうわよ。
三男 いいんだったら
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