ことを見てとった。かれは先のふたりのように、ゆっくり岸に近づいた。それから、ふちの草につかまった。けれど、つかまったままじっとしている。なにか思案《しあん》しているようすである。
 こちらの三人は、顔を見あわせた。三人の顔から、ちゃめ気が、しばらくためらって、そしてぬけていった。しんとなった。
 青ざめた顔を兵太郎君がしかめた。そして腹がいたいときのように、腰をおった。
「どうした、兵タン」
と徳一君が、おどおどしてきいた。
「あがってこいよ」
と、久助君もいっしょにいった。
 それでも兵太郎君は、かた手で草につかまったまま、動こうとはしなかった。ほおげたの下の、ひとところ、チョークでもなすりつけたように白いのが、久助君の目にいたいたしくうつった。これはたいへんだと思った。
 三人はよっていって、兵太郎君のつめたい手をにぎって上にひっぱりあげると、兵太郎君は死にかかりの人のように力なく、三人のなすがままになった。あがってきてもかれは、ベソをかいた顔つきで、ぼけんとつっ立っているので、三人はしまつをしてやらねばならなかった。徳一君と久助君は、めいめいの手ぬぐいを提供《ていきょう》して、兵
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