川
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)薬屋《くすりや》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)子|山羊《やぎ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)へそ[#「へそ」に傍点]
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一
四人が川のふちまできたとき、いままでだまってついてくるようなふうだった薬屋《くすりや》の子の音次郎《おとじろう》君が、ポケットから大きなかきをひとつとり出して、こういった。
「川の中にいちばん長くはいっていたものに、これやるよ」
それを聞いた三人は、べつだんおどろかなかった。だまりんぼの薬屋の音次郎君は、きみょうな少年で、ときどきくちをきると、そのときみなで話しあっていることとはまるでべつの、へんてこなことをいうのがくせだったからである。三人は、なによりも、その賞品に注意をむけた。
つややかな皮をうすくむくと、すぐ水分の多いきび色の果肉があらわれてきそうな、形のよいかきである。みなはそれを、百匁《ひゃくめ》がきといっている。このへんでとれるかきのうちでは、いちばん大きいうまい種類である。音次郎君の家のひ
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