太郎君のかた足ずつをふいた。音次郎君は、草の上からパンツをひろってきた。兵太郎君は、なにからなにまで、みな、ひとにさせた。ぼうしまでかぶせてもらった。
ところで、兵太郎君は、すっかり身じたくができたのに、歩きだそうとしなかった。ときどきいたみがおそうかのように、顔をしかめて腹のところからからだをおった。
あとの三人は、こまったなア、というように顔を見あわせた。しかし、ほんとうに兵太郎君のからだに故障ができたかどうか、三人は半信半疑だった。
というのは、兵太郎君はいぜんから、死んだふりや、腹のいたむまねが、ひじょうにうまかったからである。フットボールが飛んできて、兵太郎君の頭にあたりでもすると、かれはふらふらとよろめいて、地べたの上にところきらわずばったりたおれ、あたりどころが悪くて、自分はおだぶつしてしまったのだというようすをして見せるのであった。そのまねは、真にせまっていた。久助君はまだ、人間がフットボールにあたって死ぬところを見たことはないが、もしそういうことがあるならば、きっと兵太郎君がするとおりの所作《しょさ》をして死ぬだろうと思っていた。たびたび兵太郎君のまねにだまされ
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