れの牛がさびしげに鳴いた。それをしお[#「しお」に傍点]に、徳一君がげんしゅくな表情になって、そろりそろりと岸の方へ動きだした。まだぬれていないところをなるべくぬらさぬように、ゆっくりいくのである。久助君と兵太郎君は顔を見あわせたが、もうわらわなかった。
 久助君はふたりきりになると、このゆうぎはひどくばかげていると感じられたので、まだがまんすればできたのだが、勝ちを兵太郎君にゆずることにした。徳一君がしたように、そろりそろり岸の方へ歩みよって、草にすがって上にあがった。
 草をふんで立つと、ひえのために、足のうらがしびれているのが、よくわかる。すぐ手ぬぐいで足から腰をふいて、パンツとズボンをはいた。からだがふるえているから、ズボンをはくときよろけていって、やはりズボンをはいている徳一君にぶつかった。
 まだ兵太郎君は、川の中にはいっている。もう勝ちはかれにきまったのだから、なにも、やせがまんしているわけはないのだが、とくいなところをひとに見せたいのだろう。こういう点が、ほらふき[#「ほらふき」に傍点]の兵太郎君のばか[#「ばか」に傍点]なところであると、久助君は思って見ていた。兵太郎
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