て来ました。
 赤とんぼは、ちょっとびっくりしました。それは、いつも開いている窓《まど》が、皆《みな》しまっているからです。
 どうしたのかしら? と、赤とんぼが考えたとき、玄関《げんかん》から誰《だれ》か跳《と》び出して来ました。
 おじょうちゃんです。あのかあいいおじょうちゃんです。
 けれども、今日のおじょうちゃんは、悲しい顔つきでした。そして、この別荘《べっそう》へはじめて来たときかぶってた、赤いリボンの帽子《ぼうし》を着け、きれいな服《ふく》を着ていました。
 赤とんぼはいつものように飛んで行って、おじょうちゃんの肩《かた》にとまりました。
「あたしの赤とんぼ……かあいい赤とんぼ……あたし、東京へ帰るのよ、もうお別れよ。」
 おじょうちゃんは、小さい細い声で泣《な》くように言いました。
 赤とんぼは悲しくなりました。自分もおじょうちゃんといっしょに東京へ行きたいなと思いました。
 そのとき、おじょうちゃんのお母さんと、赤とんぼにいたずらをした書生《しょせい》さんが、出てまいりました。
「ではまいりましょう。」
 皆《みな》、歩き出しました。
 赤とんぼは、やがておじょうちゃん
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