の肩《かた》を離《はな》れて、垣根《かきね》の竹の先にうつりました。
「あたしの赤とんぼよ、さようなら――」
 かあいいおじょうちゃんは、なんべんもふりかえっていいました。
 けど、とうとう、皆《みな》の姿《すがた》は見えなくなってしまったのです。
 もう、これからは、この家は空家《あきや》になるのかな――赤とんぼは、しずかに首をかたむけました。

 淋《さび》しい秋の夕方など、赤とんぼは、尾花《おばな》の穂先《ほさき》にとまって、あのかあいいおじょうちゃんを思い出しています。



底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書
   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行
親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書
入力:もりみつじゅんじ
校正:鈴木厚司
2003年5月18日作成
青空文庫作成ファイル:
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