赤とんぼ
新美南吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)垣根《かきね》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大|蜘蛛《ぐも》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぶっ[#「ぶっ」に傍点]かけました
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 赤とんぼは、三回ほど空をまわって、いつも休む一本の垣根《かきね》の竹の上に、チョイととまりました。
 山里の昼は静かです。
 そして、初夏の山里は、真実《ほんとう》に緑につつまれています。
 赤とんぼは、クルリと眼玉《めだま》を転《てん》じました。
 赤とんぼの休んでいる竹には、朝顔《あさがお》のつるがまきついています。昨年《さくねん》の夏、この別荘《べっそう》の主人が植《う》えていった朝顔の結んだ実が、また生《は》えたんだろう――と赤とんぼは思いました。
 今はこの家には誰《だれ》もいないので、雨戸が淋《さび》しくしまっています。
 赤とんぼは、ツイと竹の先からからだを離《はな》して、高い空に舞《ま》い上がりました。

 三四人の人が、こっちへやって来ます。
 赤とんぼは、さっきの竹にまたとまって、じっと近づい
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