て来る人々を見ていました。
一番最初にかけて来たのは、赤いリボンの帽子《ぼうし》をかぶったかあいいおじょうちゃんでした。それから、おじょうちゃんのお母さん、荷物《にもつ》をドッサリ持った書生《しょせい》さん――と、こう三人です。
赤とんぼは、かあいいおじょうちゃんの赤いリボンにとまってみたくなりました。
でも、おじょうちゃんが怒《おこ》るとこわいな――と、赤とんぼは頭をかたげました。
けど、とうとう、おじょうちゃんが前へ来たとき、赤とんぼは、おじょうちゃんの赤いリボンに飛びうつりました。
「あッ、おじょうさん、帽子《ぼうし》に赤とんぼがとまりましたよ。」と、書生さんがさけびました。
赤とんぼは、今におじょうちゃんの手が、自分をつかまえに来やしないかと思って、すぐ飛ぶ用意をしました。
しかし、おじょうちゃんは、赤とんぼをつかまえようともせず、
「まア、あたしの帽子《ぼうし》に! うれしいわ!」といって、うれしさに跳《と》び上がりました。
つばくらが、風のようにかけて行きます。
かあいいおじょうちゃんは、今まで空家《あきや》だったその家に住みこみました。もちろん、お母さん
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