がるようにもたれかかった。
 久助君は、徳一君のところにもなかまたちはいないことがわかって、がっかりした。が、兵太郎君の動作《どうさ》をみたら、きゅうに、ここで兵太郎君とふたりきりで遊ぼう、それでも十分おもしろいという気がわいてきた。ほし草の積んであるところとか、つぼけ[#「つぼけ」に傍点](藁積《わらぐま》)のならんでいるところは、子どもには、ひじょうにたくさんの楽しみをあたえてくれるものだ。そこで、久助君も兵太郎君のそばへいって、じぶんのからだをゴムまりのようにほし草にむかって投げつけた。ほし草はふわりと、やわらかにあたたかく、久助君をうけとった。とたんに、ヒチヒチと音をたてて、ばった[#「ばった」に傍点]が頭の上から豆畑の方へ飛んでいった。
 久助君は、頭や耳に草のすじがかかったが、とろうとしなかった。ほし草の山は、昼間じゅう太陽にあたためられていたので、そこにもたれかかっていると、おかあさんのふところにだかれていたじぶんを思い出させるような、ぬくとさだった。久助君は、ねこのようにくるいたい衝動《しょうどう》が、からだの中にうずうずするのを感じた。
「兵タン、すもうとろうかやァ」
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