久助君の話
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)久助《きゅうすけ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ほら兵[#「ほら兵」に傍点]
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久助《きゅうすけ》君は、四年から五年になるとき、学術優等品行方正のほうびをもらってきた。
はじめて久助君がほうびをもらったので、電気会社の集金人であるおとうさんは、ひじょうにいきごんで、それからは、久助君が学校から帰ったらすぐ、一時間勉強することに規則をきめてしまった。
久助君は、この規則を喜ばなかった。一時間たって、家の外に出てみても、近所に友だちが遊んでいないことが多いので、そのたびに、友だちをさがして歩かねばならなかったからである。
秋のからりと晴れた午後のこと、久助君は柱時計《はしらどけい》が三時半をしめすと、「ああできた」と、算術の教科書をパタッととじ、つくえの前を立ちあがった。
外に出るとまばゆいように明るい。だが、やれやれ、きょうもなかまたちの声は聞こえない。久助君は、お宮の森の方へ耳をすました。
森は、久助君のところから三町ははなれていたが、久助君は、そこ
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