を送《おく》ってきた海蔵《かいぞう》さんが、村《むら》の茶店《ちゃみせ》にはいっていきました。そこは、村《むら》の人力曳《じんりきひ》きたちが一仕事《ひとしごと》して来《く》ると、次《つぎ》のお客《きゃく》を待《ま》ちながら、憩《やす》んでいる場所《ばしょ》になっていたのでした。その日《ひ》も、海蔵《かいぞう》さんよりさきに三|人《にん》の人力曳《じんりきひ》きが、茶店《ちゃみせ》の中《なか》に憩《やす》んでいました。
店《みせ》にはいって来《き》た海蔵《かいぞう》さんは、いつものように、駄菓子箱《だがしばこ》のならんだ台《だい》のうしろに仰向《あおむ》けに寝《ね》ころがってうっかり油菓子《あぶらがし》をひとつ摘《つま》んでしまいました。人力曳《じんりきひ》きたちは、お客《きゃく》を待《ま》っているあいだ、することがないので、つい、駄菓子箱《だがしばこ》のふたをあけて、油菓子《あぶらがし》や、げんこつや、ぺこしゃんという飴《あめ》や、やきするめや餡《あん》つぼなどをつまむのが癖《くせ》になっていました。海蔵《かいぞう》さんもまたそうでした。
しかし海蔵《かいぞう》さんは、今《いま》
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