して、そのうえおかしいことに、大きい目は、美しい、なごやかな、てんしんらんまんな心をのぞかせているのに、小さい目は、いんけんで、ひねくれていて、狡猾《こうかつ》なまたたきをするのである。
こいつはへんだと、久助君が一生けんめい見ていると、さらに、耳も左右大きさと形がちがい、鼻でさえも、左の小鼻と右の小鼻はちがっているので、すこしゆがんで見えることがわかった。
久助君は考えた。――太郎左衛門は、ひとりの人間じゃなくて、ふたりの人間が半分ずつよりあってできているのじゃあるまいか。いぜん、久助君は、ねんどで人形を製造するのを見たことがある。まず、ふたつの型によって、人形は、半分ずつつくられ、それからふたつの半分がうまく合わさって、ひとつの人形になるのであった。神さまがわれわれ人間をつくり出すのも、あれと同じ方法でするのだろう。そして、太郎左衛門はなにかのまちがいで、大きさのちがう、うまく合わない半分ずつが合わさってできたのかもしれない。だから、太郎左衛門の中には、ふたりの人間がはいっているのだ。
――それなら、太郎左衛門が平気でうそをいったり、なにを考えてるのかわけがわからなかったりす
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