新美南吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)久助《きゅうすけ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あがって[#「あがって」に傍点]
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       一

 久助《きゅうすけ》君はおたふくかぜにかかって、五日間学校を休んだ。
 六日めの朝、みんなに顔を見られるのははずかしいなと思いながら、学校にいくと、もう授業がはじまっていた。
 教室では、案のじょう、みんながさあっとふりむいて久助君の方を見たので、久助君はあがって[#「あがって」に傍点]しまって、先生のところへ欠席届を出し、じぶんの席へ帰るまでに、つくえのわきにかけてある友だちのぼうしを、三つばかりはらい落としてしまった。さて、じぶんの席について読本《とくほん》をひらいた。
 となりの加市《かいち》君が、いま習っているのは十課だということを指でさして教えてくれた。もう十課まで進んだのか。久助君は、八課の「雨の養老」を習っていたとき、なんとなく左のほおが重いのに気がつき、その日から休んだのだった。
 じぶんが休んで家でねていたときに、みんなは八課ののこりと九課を習ったん
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