くにの、おとぎばなしか夢《ゆめ》のような情趣《じょうしゅ》を持った小さな別天地《べってんち》があった。小さな小さな別天地《べってんち》。ところがみているとただ小さいだけではなかった。無辺際《むへんさい》に大きな世界がそこに凝縮《ぎょうしゅく》されている小ささであった。そのゆえにその指さきの世界は私たちをひきつけてやまなかったのである。
 いつもその遊びをしたわけではない。それをするのは夕暮《ゆうぐれ》が多かった。木にのぼったり、草の上をとびまわったり、はげしい肉体的な遊戯《ゆうぎ》につかれてきて、夕まぐれの青やかな空気のなごやかさに私たちの心も何がなしとけこんでゆくころにそれをした。それをする相手も、たれであってもかまわぬというのではなかった。第一そんな遊びを頭からこのまないなかまもあった。女の子はたいていすきだった。
 ふたりいればできると私はいったが、ひとりでもできないことはなかった。私はひとりでよくした。ただひとりのときは自分がふたりになってするだけのことである。つまり花をとってかくしておき、そこからすこしはなれたところへできうべくんば家の角を一つまわったところまで、いっておにに
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