と、ほか二、三|人《にん》の老人《ろうじん》があいづちをうった。
 ぼくは何《なん》のことやらわけが分《わ》からなかったので、あとでお父《とう》さんにきいて見《み》たら、お父《とう》さんはこう説明《せつめい》してくれた。
「ごんごろ鐘《がね》ができたのは、わたしのお祖父《じい》さんの若《わか》かったじぶんで、わたしもまだ生《う》まれていなかった昔《むかし》のことだが、その頃《ころ》は村《むら》の人達《ひとたち》はみなお金《かね》というものを少《すこ》ししか持《も》っていなかったので、村中《むらじゅう》がその僅《わず》かずつのお金《かね》を出《だ》しあっても、まだ鐘《かね》を一つつくるには足《た》りなかった。そこで西《にし》や東《ひがし》や南《みなみ》や北《きた》の谷《たに》に住《す》んでいる人《ひと》たちやら、もっと遠《とお》くのあっちこっちの村《むら》まで合力《ごうりょく》してもらいにいったんだそうだ。合力《ごうりょく》というのは、たすけてもらうことなのさ。そうしてようやくできあがった鐘《かね》だから、四方《しほう》の谷《たに》の人《ひと》や向《む》こうの村々《むらむら》の人《ひと》
前へ 次へ
全30ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング