の心《こころ》もこもっているわけだ。だからごんごろ鐘《がね》をつくと、その谷《たに》や村《むら》の音《おと》もまじっているように聞《き》こえるのだよ。」
 ごんごろ鐘《がね》をおろすのは、庭師《にわし》の安《やす》さんが、大《おお》きい庭石《にわいし》を動《うご》かすときに使《つか》う丸太《まるた》や滑車《せみ》を使《つか》ってやった。若《わか》い人達《ひとたち》が手伝《てつだ》った。馴《な》れないことだからだいぶん時間《じかん》がかかった。
 ごんごろ鐘《がね》はひとまず鐘楼《しゅろう》の下《した》に新筵《にいむしろ》をしいて、そこにおろされた。いつも下《した》からばかり見《み》ていた鐘《かね》が、こうして横《よこ》から見《み》られるようになると、何《なに》か別《べつ》のもののような変《へん》な感《かん》じがした。緑青《ろくしょう》がいっぱいついている上《うえ》に、頂《いただき》の方《ほう》には埃《ほこり》がつもっているので、かなりきたなかった。庵主《あんじゅ》さんと、よく尼寺《あまでら》の世話《せわ》をするお竹《たけ》婆《ばあ》さんとが、縄《なわ》をまるめてごしごしと洗《あら》った
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