た。こういう人《ひと》たちも、みなごんごろ鐘《がね》と、目《め》に見《み》えない糸《いと》で結《むす》ばれているのだ。僕《ぼく》はいまさら、この大《おお》きくもない鐘《かね》が、じつにたくさんの人《ひと》の生活《せいかつ》につながっていることに驚《おどろ》かされた。
老人《ろうじん》たちは、ごんごろ鐘《がね》に別《わか》れを惜《お》しんでいた。「とうとう、ごんごろ鐘《がね》さま[#「さま」に傍点]も行《い》ってしまうだかや。」といっている爺《じい》さんもあった。なんまみだぶ、なんまみだぶといいながら、ごんごろ鐘《がね》を拝《おが》んでいる婆《ばあ》さんもあった。
鐘《かね》をおろすまえに、青年団長《せいねんだんちょう》の吉彦《よしひこ》さんが、とてもよいことを思《おも》いついてくれた。長年《ながねん》お友《とも》だちであった鐘《かね》ともいよいよお別《わか》れだから、子供《こども》たちに思《おも》うぞんぶんつかせよう、というのであった。これをきいて僕《ぼく》たち村《むら》の子供《こども》は、わっと歓呼《かんこ》の声《こえ》をあげた。みなつきたいものばかりなので、吉彦《よしひこ》さん
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