の痰《たん》のような音《おと》はぜんぜんしなかった。そこで僕《ぼく》たちは、この鐘《かね》の健康状態《けんこうじょうたい》はすこぶるよろしい、と診断《しんだん》したのだった。
 また紋次郎君《もんじろうくん》とこのお婆《ばあ》さんの話《はなし》によると、この鐘《かね》を鋳《い》た人《ひと》が、三河《みかわ》の国《くに》のごんごろう[#「ごんごろう」に傍点]という鐘師《かねし》だったので、そう呼《よ》ばれるようになったんだそうだ。鐘《かね》のどこかに、その鐘師《かねし》の名《な》が彫《ほ》りつけてあるそうな、と婆《ばあ》さんはいった。これは木之助《きのすけ》爺《じい》さんの話《はなし》よりよほどほんとうらしい。
 しかし僕《ぼく》は、大学《だいがく》にいっている僕《ぼく》の兄《にい》さんの話《はなし》が、いちばん信《しん》じられるのだ。兄《にい》さんはこういった。「それはきっと、ごんごん[#「ごんごん」に傍点]鳴《な》るので、はじめに誰《だれ》かがごんごん[#「ごんごん」に傍点]鐘《がね》といったのさ。ごんごん[#「ごんごん」に傍点]鐘《がね》ごんごん[#「ごんごん」に傍点]鐘《がね》と
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