ようになったのだそうだ。しかしこの話《はなし》はどうも怪《あや》しい、と僕《ぼく》は思《おも》う。人間《にんげん》のぜんそくが鐘《かね》にうつるというところが変《へん》だ。それなら、人間《にんげん》の腸《ちょう》チブスが鐘《かね》にうつるということもあるはずだし、人間《にんげん》のジフテリヤが鐘《かね》にうつるということもあるはずである。それじゃ鐘《かね》の病院《びょういん》も建《た》たなければならないことになる。
僕《ぼく》と松男君《まつおくん》はいつだったか、ろんよりしょうこ、ごんごろ鐘《がね》がはたしてごんごろごろ[#「ごんごろごろ」に傍点]と鳴《な》るかどうか試《ため》しにいったことがある。静《しず》かなときを僕《ぼく》たちは選《えら》んでいった。鐘楼《しゅろう》の下《した》にあじさいが咲《さ》きさかっている真昼《まひる》どきだった。松男君《まつおくん》が腕《うで》によりをかけて、あざやかに一つごオん、とついた。そして二人《ふたり》は耳《みみ》をすましてきいていたが、余韻《よいん》がわあんわあんと波《なみ》のようにくりかえしながら消《き》えていったばかりで、ぜんそく持《も》ち
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