《ひ》っ組《く》んだ。そして足掛《あしか》けで倒《たお》そうとしたが、比良夫君《ひらおくん》は相撲《すもう》の選手《せんしゅ》だから、逆《ぎゃく》に腰《こし》をひねって松男君《まつおくん》を投《な》げ出《だ》してしまった。
 こんどは用吉君《ようきちくん》が、得意《とくい》の手《て》で相手《あいて》の首《くび》をしめにかかったが、反対《はんたい》に自分《じぶん》の首《くび》をしめつけられ、ゆでだこのようになってしまった。
 そんなことをしている間《あいだ》に、鐘《かね》をのせた牛車《ぎゅうしゃ》はもうしんたのむね[#「しんたのむね」に傍点]をおりてしまっていた。五|年《ねん》以上《いじょう》の者《もの》は、気《き》がせいてたまらなかった。ぐずぐずしていると、ついに鐘《かね》にいってしまわれるおそれがあった。そこで、比良夫君《ひらおくん》のことなんかほっといて、みんな鐘《かね》めがけて走《はし》った。総勢《そうぜい》十五|人《にん》ほどであった。鐘《かね》に追《お》いついてみると、ちゃんと比良夫君《ひらおくん》がうしろについて来《き》ていた。みんなは少《すこ》しいまいましく思《おも》った
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