報恩講《ほうおんこう》のときなんかに、人《ひと》を集《あつ》めるのに困《こま》るわなア。」
といったのは、いつも真面目《まじめ》なことしか言《い》わない種《たね》さんだ。
「なあに、学校生徒《がっこうせいと》を呼《よ》んで来《き》て、ラッパを吹《ふ》かせりゃええてや。トテチテタアをきいたら、みんな、ほれ報恩講《ほうおんこう》がはじまると思《おも》って出《で》かけりゃええ。」
と答《こた》えたのは、ひょっとこづらをして見《み》せることの上手《じょうず》な松《まつ》さん。
「ほんな馬鹿《ばか》な。ラッパで爺《じい》さん婆《ばあ》さんを集《あつ》めるなどと、ほんな馬鹿《ばか》な。」
と、種《たね》さんはしかたがないように笑《わら》った。
「これでごんごろ鐘《がね》もきっと爆弾《ばくだん》になるずらが、あんがい、四郎五郎《しろごろう》さんとこの正男《まさお》さんの手《て》から敵《てき》の軍艦《ぐんかん》にぶちこまれることになるかもしれんな。」
と吉彦《よしひこ》さんがいった。四郎五郎《しろごろう》さんの家《いえ》の正男《まさお》さんは、海《うみ》の荒鷲《あらわし》の一人《ひとり》で、いま南《み
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