いさんの耳に、毛のはえとることくれえ、毎日見て、よく知ってけつかるくせに。」
と、しかりとばしました。そんなこともありました。
克巳はからうす[#「からうす」に傍点]をめずらしがって、米をつかせてくれとせがみました。しかし、二十ばかり足をふむと、もういやになって、おりてしまいましたので、あとは、松吉と杉作がしなければなりませんでした。
あしたは克巳が、町へ帰るという日の昼さがりには、三人でたらい[#「たらい」に傍点]をかついで裏《うら》山の絹池《きぬいけ》にいきました。絹池は、大きいというほどの池ではありませんが、底知れず深いのと、水がすんでいてつめたいのと、村から遠いのとで、村の子どもたちも、遊びにいかない池でした。三人は、その池をたらいにすがって、南から北に横ぎろうというのでした。
三人は南の堤防《ていぼう》にたどりついてみますと、東、北、西の三方を山でかこまれた池は、それらの山と、まっ白な雲をうかべているばかりで、あたりには、人のけはいがまるでありません。三人はもう、すこしぶきみに感じました。しかし、せっかくここまでたらい[#「たらい」に傍点]をかついできて、水にはいりも
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