いぼ
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)松吉《まつきち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)牛|部屋《べや》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)からうす[#「からうす」に傍点]
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一
にいさんの松吉《まつきち》と、弟の杉作《すぎさく》と、年もひとつちがいでしたが、たいへんよくにていました。おでこの頭が顔のわりに大きく、わらうと、ひたいにさるのようにしわがよるところ、走るとき、両方の手をひらいてしまうところも同じでした。
「ふたり、ちっとも、ちがわないね。」
と、よく人がいいました。そうすると、にいさんの松吉が、口をとがらして、虫くい歯のかけたところからつばをふきとばしながら、いうのでした。
「ちがうよ。おれにはふたつもいぼがあるぞ。杉にゃひとつもなしだ。」
そういって、右手の骨《ほね》ばったにぎりこぶしを出して見せました。見ると、なるほど、親指と人さし指のさかいのところに、一センチぐらいはなれて、小さいいぼがふたつありました。
この兄弟の家へ、町から、いとこの克巳《か
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