おかみさんも、金光教《こんこうきょう》のなんとやらへいっていない、克巳《かつみ》ちゃんもまだ学校から帰ってこない、といいました。
ふたりは、ちょっと失望《しつぼう》しました。
「だが、まだ三時だから、もうちょっと待っておれよ。そのうちに、おかみさんが帰っておいでるかもしれんに。」
と、小平さんがいいました。
そこでまた、希望《きぼう》がわきました。ふたりは、あがりはなに、目白《めじろ》おしにならんで、腰《こし》をかけました。
小平さんは、ともかく、お餅《もち》をいただいておこうといって、おくへはいっていき、カタンコトンと音をさせていましたが、やがて、からの重箱《じゅうばこ》を、また風呂敷《ふろしき》につつんで出てきました。松吉はそれをうけとって、ひざの横におきました。
あれから、五分たちました。まだ、おばさんは帰ってきません。おじさんも克巳《かつみ》も、帰ってきません。松吉、杉作はいっしょに、小さいためいきをつきました。
小平さんは、ふたりの頭を見ていましたが、
「だいぶ、のびとるな、ひとつ、だちんのかわりに、かってやろか。」
と、いいました。
ふたりは顔を見あわせて、
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