ました。それを見て、ふたりはびっくりしました。おじさんではなかったのです。
 それはふたりの村の、かじ屋の三男の小平《こへい》さんでした。小平さんは、そのまえの年の春ごろ、学校を卒業しました。そういえばいつか小平さんが町の床屋《とこや》さんへ、小僧《こぞう》にいったということを、聞いたような気もします。
 ふたりは、つくづくと小平さんの顔とすがたを、うちながめました。
 小平さんはなんとなく、おとなくさくなりました。色が白くなり、あごのあたりがこえてきたようでした。頭も床屋《とこや》にきたからでしょうが、四角なかっこうに、きれいにかりこんでいます。もとから、あまり口をきかないで、目を細くして、にこにこしていました。そのくせ、人のうしろから、よくいたずらをしました。
 いちど、松吉は、耳の中へあずきを入れられて、こまったことがありました。ああいうことを、小平さんは、今でもおぼえてるかしらん、忘れてしまったかしらん――ともかく、いまも小平さんは、白いうわっぱり[#「うわっぱり」に傍点]のポケットに両手を入れて、ふたりを見ながら、にこにこしています。
 小平さんは、きょうは親方《おやかた》も
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