ょろんがふたりともやめられないのでした。
 ふたりは、こころの中では、ひとつの不安を感じていました。それは、町の子どもにつかまって、いじめられやしないか、ということでした。だから、ふたりはこころをはりつめ、びくびくし、なるべく、子どものいないようなところをえらんでいきました。
 同盟書林《どうめいしょりん》という、大きい本屋の前を通りすぎて、すこしいってから、東へはいるせまい路地《ろじ》なかに、克巳の家はありました。そこで、同盟書林《どうめいしょりん》をすぎると、ふたりは、首をがちょうのようにのばして、どんな細い路地《ろじ》ものぞきこみました。道もない、ただ家と家のあいだになっているところまで、のぞきこみました。
 そのうちに、杉作が、
「あっ、ここだ。」
 と、落とした財布《さいふ》でも見つけたように、さけびました。なるほど、その小路《こうじ》のなかほどに、紅《あか》と白のねじ飴《あめ》の形をした、床屋《とこや》の看板《かんばん》が見えました。――克巳の家は床屋さんでした。
 ふたりは、幸運《こううん》のしっぽを、たしかにつかんだ人のように、あわてずに、進んでいきました。竹切れは、ぬ
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