ュ人達であらう。青色の橋の欄干に女異人が二人立つ。もう少し日が暮れたなら正にヰツスラア情調中の人となる可きものであらう。
 京都の女の相貌は複合寫眞の美しさのやうに思はれる。深い刻みや、個人性が消えてぼつとした Morbidezza がお白いの下から覗く。
 ああ河岸に始めて燈が點いた。予等は之から歩かねばならぬ。
「おお、ねえさん、それぢや勘定!」(四月三日、京都にて。)

 二つ三つ妙な光景を見た。君は予が京都でピエエル・ロチイ的の見方をするのを喜ばぬかも知れないが、京都といふものの傳説から全く自由な予は、どうしてもかくの如き漫畫派的羅曼的に見ないわけにゆかぬ。たとへば都踊の中の茶の湯なんかは實に此の見方から愉快の場所だ。殊に異人が此滑稽のアクサンを強くしてくれる。
 僕等には到底我慢の出來ない七面倒くさい儀式で茶が立てられた。身なり、動作に對應せぬ童顏の小さい女達が茶を配るとき第一の大きな茶碗が最端の年とつた異人の前に置かれた。
 それに對した側には色斑らな上衣及びスカウトの西洋婦人の一群が好奇の目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]つて「チヤノユ」の珍妙の手續を見て居た
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