うちよ」]ですこやかに自由《じいう》な身體《からだ》で、いま現在《げんざい》のやうな未來《みらい》の來《く》ることなどは、夢《ゆめ》にも思《おも》ふことなくクローバーの原《はら》や、廣《ひろ》い大道《おほみち》を飛《と》びはねてゐたのであつた。
『私《わたし》は、小《ちい》さい時《とき》運動家《うんどうか》だつたのよ。』
まち子《こ》は、そんなことを訴《うつた》へるやうに夫《をつと》に云《い》つた。彼女《かれ》は、自分《じぶん》のすこやかな、乙女《おとめ》の時《とき》の輕《かる》やかな、快活《くわいくわつ》な姿《すがた》を夫《をつと》に見《み》せることが出來《でき》ないのを、淋《さび》しいことのやうに一人《ひとり》で考《かんが》へた。そして、それがなんとなく彼《かれ》に對《たい》して氣《き》の毒《どく》な、彼女《かれ》の一|生《しやう》を通《つう》じてすまないことのやうに、思《おも》はれるのであつた。まち子《こ》は、もはや不自由《ふじいう》の足《あし》の惡《わる》い、自分《じぶん》の肉體《からだ》についてはあきらめてゐる。勿論《もちろん》、彼女《かれ》の夫《をつと》は、彼女《かれ》以
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