いだう》に生《うま》れた男《をとこ》であつた。彼女《かれ》はそれを不思議《ふしぎ》な奇遇《きぐう》のやうに喜《よろこ》んだ。そしてお互《たがひ》に東京《とうきやう》に出《で》て來《き》たことが殆《ほとん》どおなじ位《くらゐ》の時《とき》で、彼女《かれ》の方《はう》が少《すこ》し早《はや》い位《くらゐ》のものであつた。しかもクリスチヤンの彼女《かれ》の夫《をつと》が、まち子《こ》も日曜《にちえふ》ごとに通《かよ》つてゐた札幌《さつぽろ》のおなじある教會《けうくわい》に、熱心《ねつしん》に通《かよ》つてたことなどがわかると、彼女《かれ》はなんだか、とりかへしのつかない殘念《ざんねん》なことをしたやうに思《おも》はれて、ならなかつた。
『どうしてお互《たがひ》にわからなかつたんでせうね』
と、彼女《かれ》はいつも、その頃《ころ》の自分《じぶん》の樣子《やうす》やいろ/\こまかい出來《でき》ごとまで思浮《おもひうか》べながら云《い》つた。もはや、八|年《ねん》ばかり前《まへ》のことである、まち子《こ》は、まだ赤色《あかいろ》のリボンをかけた少女《せうぢよ》[#ルビの「せうぢよ」は底本では「せ
前へ
次へ
全17ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
素木 しづ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング