くかう》では作法《さはふ》と體操《たいさう》を休《やす》まなければならなかつた。
 けれどもまち子《こ》は必《かなら》ずしも癒《なを》らないとは思《おも》はなかつた。そしてどうかして早《はや》くなほしたいといつも考《かんが》へてた。そして自分《じぶん》の部屋《へや》に入《はひ》ると、古《ふる》びた青《あを》いビロードの椅子《いす》に腰《こし》をおろして、その膝《ひざ》をもんだり、痛《いた》さをこらへて少《すこ》しでも折《を》り曲《ま》げやうとしたり、または罨法《あんはふ》してそつとのばしたり等《など》した。そしてまち子《こ》は自分《じぶん》が何《なん》の爲《た》めに、いつとも知《し》れずこんな足《あし》になつたのだらうか、といふ事《こと》を考《かんが》へてると、いつの間《ま》にか涙《なみだ》が浮《うか》んで來《き》てならなかつた。
 まち子《こ》は、ふと昔《むかし》のことを考《かんが》へると、なんとなく自分《じぶん》の身《み》が急《きふ》にいとしいものゝやうに思《おも》はれて、そのいとしいものをかい抱《いだ》くやうに身《み》をすくめた。
 まち子《こ》は、いつも窓《まど》に向《む》いて
前へ 次へ
全17ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
素木 しづ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング