てゐる土人の子をよんで、雛鳥をたしかめにやった。
彼女は、自分でそれをたしかめる事は、とても出来ない。絶望の時、その正反対のよろこびといふ事が、ふと頭にひらめくけれども、それとても自分でたしかめるのは恐ろしい。まち子は、茫然と考へてゐた。
土人の子供は、急いで見て来て、やはり死んでるとつげた。雛鳥は動かなかった。
『どうしやう、中村さんの家の鳥なのね。』
彼女は、きのふその鳥の飼主を知ったのを恨めしさうに云った。
『きび畑に投げて来やう。』
土人の子はそばに茫然立って云った。
『いけない、いけない。』まち子は、そのまゝ橡側にかけ上って、廊下を小走りに電話室に行って、大事件のやうに鈴をならして会社に電話をかけた。
良人は電話口でまち子の云ふ事を聞いて居たが、たちまち笑ひ出して、『そんな事は、ほっといたらいゝ、』といって取り合はない。
『どうしやう――』と再び電話口で哀願したけれども、男はその時、笑ふより処置がなかったと見えて、矢張り笑ってる。
まち子は、電話を切って、茫然と廊下を引きかへしながら、
『ほっとかれる事ぢゃない』と繰り返してまた椽に佇みながらやっぱり、中村さんの家
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