雛鳥の夢
素木しづ
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明地《あきち》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](「反響」大正3・7)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)自然はます/\力強く
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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まち子は焼けるやうに、椽からすべるやうに降りて、高い椽の下の柱の所にわづかばかりの日影を求めて、その中にちいさく佇んだ。
そして、いつものやうにうっとりと、明地《あきち》のなかに植ゑた黄色や、赤の小さい瑪瑙のやうなのや、また大きな柿のやうなトマトを親しげに見まもりながら、またいつもの鶏が来てその實をつゝきはしないかと心をくばった。
太陽が、頭の上に火のやうに燃えたって、自分の行為のすべてに干渉するやうな、すべてが熱苦しくわづらはしい夏のさかり、それが漸くすぎて十一月とはなったものゝ、この南のはてには、木の葉の紅葉するといふ事も、落ちるといふことも、殆んど見られない。夏のさかりに姿を見せないやうな蚊がいま頃漸く出て来たり、赤土の上を匍ふとげ
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