い芽を赤い土の上に喜びにかゞやく瞳を持ってしみ/″\と眺めた。彼女は二三日その青い芽によって、どれだけ慰められたことだらう。
ところが、その芽の生ひ立ちはあまりに早かった。その芽がやがて二三寸ものびたと思ふ時、もはやその先には白い花がついて居た。その、よごれたやうなみにくい小さな白い花の為めに、その茎はもはや硬く、その葉は赤く土によごれて居るのであった。
彼女は佇んで、その茎に手をふれた時、その葉に指を触れた時、驚いて立ち上った。そしてじっとその見すぼらしく、かたく育ったほうれん草を足元に見つめて、なげやったやうな心のうちにしみ/″\と涙のわくのを覚えた。あまり強い日光は、あまり強い母の慈愛のごとく、遂に可憐な草の芽をも自由に生ひ立たせなかった。すべては彼女の心にふるべくもない。
まち子は、それからだん/\かたくなに土にまみれゆく草と、強い日光とをうらめしげに椽の柱によって見てゐた。そしてこの南の天地は、すべて強いものゝみさかゆるのであらうかと思はるゝまで草の葉もすべて針のやうな鋭さを持ってゐることが、恐ろしくなって来た。
けれども、女の優しい果物の露のやうな、慈愛の心は、なに
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