不思議の天地は、一つになるやうに考へられた。
二人は、歩き出した。遠い幸福を求むる爲めに輝いた心は、二人を森に向つて歩かせた。しかし二人が森に近づいた時、そこには限られた他人の家があつて、知られざる人々が木の陰に彼等を眺め、野にはやはり枯草がみにくゝ慄《ふる》へてゐた。
二人は、足を停めた。そして、かなしみの瞳が、はかなく遠くに放たれた。限られたと思うた野は、また森の蔭からはるかにつゞいて、また二人の希望は、草の盛《も》り上つたやうに見える、彼方の野につながれた。
彼女は言つた。
『あすこへ行きませう。きつといゝに違ひないわ。』
しかし、二人が歩みをよせた時に、そこには、あざみ[#「あざみ」に傍点]のとげや、ひろげた葉のかげに、恐怖がひそんでゐるやうな草が、まばらに擴がつてゐた。
二人は、しばらくあてどもなく立つてゐた。そして、遂に彼方から近づいて來るやうな人に向つて、二人が求めてゐる廣い緑の野をたづねることにした。近づいて來た人は、年老いた男であつた。彼は、おだやかな笑顏を持つて、この近所にはこれより野がないこと、この野は、どこまでも/\かぎりなくつゞいて、淋しい人の行かな
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