幸福への道
素木しづ

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)階段《きざはし》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|言《こと》も

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)淡絹《※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]エル》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)郊外へ/\と
−−

『上れますか。』
 高い、こまかい階段《きざはし》の前に、戀人の聲が、彼女の弱い歡樂の淡絹《※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]エル》をふりおとした。
 彼女は、立止まつた、その瞬間、いま賑かな街を俥で飛んで來た、わづか十五分間の、眩惑されるやうな日のなかの、うれしさの心まどひが、彼女の心の底に常にひそんでゐる孤獨と悲哀の恐ろしさに、つゝまれてしまつた。『私の幸福を、私の弱さがさまたげやしないか。』彼女は、非常に弱かつた。そしてその足は、彼女がせまい胸を壓するやうに、脇の下にはさんでゐる所の、黒い杖でさゝへなければ、まだ若い彼女
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