しまって、彼女には重苦しいやるせない夕方の木影のような暗い不安な世界ばかりになったように思われた。
『私はもうみんなお友だちと遊ぶことが出来ない。私は一人ぼっちになってしまわなければならない。けれどもどうしたことだろう。』
少女は、忽《たちまち》きのう友だちと街を自由に楽しく歩きながら、今日からの夏休に対して、限りない歓楽の想像と、それについていろ/\な約束をしたこと等思出して悲しかった。
そして、今朝《けさ》は友だちが農園の小川のほとりに遊びに行く為めに、誘いに来るだろうと思いながら、少女は肩のあたりから落ちそうになった、赤いリボンをむしり取りながら、茫然と目の前を見つめた。『本当にどうして、[#「『本当にどうして、」は底本では「本当にどうして、」]私ばかりが、私ばかりにこんな事があるのだろうか、皆が知らない顔をしているとする。けれども皆はいつも愉快に楽しそうなのだもの。私ばかりだ。』
少女はじっと動かずに疲れたらしい様をして、恨めしそうにカーテンの先をわずかにつまんでは、無意識にかみ初めた。と、不意に殆ど彼女がおそわれるように感じた程に――母親が襖を開けて顔を出した。
『もう
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