咲いてゆく花
素木しづ
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)夏休《なつやすみ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)少女は[#「少女は」は底本では「小女は」]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)くら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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少女は、横になって隅の方に――、殆ど後から見た時にはランプの影になって、闇がどうしてもその本の表を見せまいと思われる所で、一心になって小説をよみふけっていた。
明日からつゞく夏休《なつやすみ》の安らかさと、大きな自由との為めに、少女は[#「少女は」は底本では「小女は」]いま心一っぱいに、小説のなかの[#「なかの」は底本では「なかのかの」]かなしいなつかしい少年とその家庭とについていつまでもいつまでも涙ぐむことが出来るのだった。そして自分の現在のすべてを幻のようにとかし込んで、夢のような息をはいていた。
おなじ部屋のランプの光りの中心には、中学に行ってる少女の兄と、その友だちが横になってこれから行わるべきボールのマッチのことについて話し合って
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