ら先において、人間であるかなしさや醜さをどれほど感ずることかもしれない。けれども少女はまだなんにも知らない。まず最初の女であるが故の驚きとかなしみと不安との為めに、すべての幼いよろこびを失ってしまったのであった。
少女は、青く高く輝くばかりに晴れ渡っている大空を、茫然と見上げた。そして漠然とした悲哀が雲のように涙となって、瞳の上にかぶさって来るのを覚えた。
彼女は、涙をかくして再びまた汗のにじむような熱さと、きらびやかな日の輝きを見た時に、この強烈な日の光りの明るさに少女はたえられなかった。そして彼女はひたすらに、ほの暗く沈んでゆくような夕暮になるのをまちあぐんだ。
少女は初めてこの時、明るさを暗くしたいと思った。くれ方の定めがたい闇のいろがなつかしかった。そこに女が秘密をよろこぶという心が胚胎したのかもしれない。彼女はもはや女そのものゝ運命の、暗示をわずかながら知ることが出来たのかもしれない。
少女は遂に、喜びと嬉しさと限りない自由とによって想像された夏休の第一日目を、唯いまわしさとかぎりない羞恥と、さま/″\な不安な感情に捕えられて、彼女の部屋の窓際に暮した。そしていつか、
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